田中(あらいちゅー), 馬主で大家で占い師
宿曜占星術(宿曜占い)とは?
宿曜占星術(宿曜占い)は日本式のインド占星術
宿曜占星術(宿曜占い)は、宿曜術とも言われています。インドで生まれ、中国仏教の経典を通じて日本に流入し、独自に進化を遂げた占いです。日本式のインド占星術とも呼べるでしょう(現在のインド占星術とは全く違う占いになっています)。
性格判断と相性判断に優れるとされ、鑑定に生まれた時間を必要としないこともあり、愛用しているプロの占い師も数多いです。
このページでは、宿曜占星術(宿曜占い)を深く学びたい占い師や、占い師をめざす人、宿曜占星術(宿曜占い)のファンに向けて、歴史的背景や各種の議論など、占いを上達させるのに役立つ情報を整理しています。
宿曜占星術(宿曜占い)の由来と歴史
宿曜占星術(宿曜占い)の内容を分解していくと、ヘレニズム由来の占星術と、インド古来の月を基準とする占星術、そして中国の陰陽五行思想や道教が合体したものだとわかります。
九曜・七曜・十二宮・二十七宿(または二十八宿)といった星や宮を駆使して、性格判断や相性判断、擇日(良い日を選ぶ)や化解(凶を吉に変える)を行います。
主に用いるパーツは二十七宿(または二十八宿)で、これは生まれた日によって決定され、その他の要素との組み合わせで吉凶を判定していきます。
先述のように、宿曜占星術(宿曜占い)は中国仏教の経典を通じて日本に流入し、日本で単体の占いとして定着するようになりました。インドや中国では、日本で用いられているような形で宿曜占星術(宿曜占い)を学ぶ人は極めて少ないでしょう。
宿曜占星術(宿曜占い)は不空金剛が文殊師利菩薩に仮託したもの
宿曜占星術(宿曜占い)の原典である「宿曜経」は、もともとは不空金剛というインド北部に生まれたの僧侶が文殊師利菩薩に仮託し、自らのインド占星術の知識をまとめたものだと言われています(矢野道雄先生の説)。
正式な仏典名は「文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経」(以下、宿曜経)であり、日本に残っている写本には上巻・下巻・算曜直章の三部が収録されています。
先述の矢野道雄先生によると、宿曜経成立の順序は下巻→上巻・算曜直章であり、不空金剛の元の「著作」を史瑶が編纂したものが下巻、楊景風がそれに手を入れたものが上巻であり、算曜直章も楊景風の筆になります。
不空金剛はインド系の僧侶であり、史瑶と楊景風は中国人ですから、ここを見てもインド由来の占星術が中国化したものが宿曜占星術(宿曜占い)であると言えるでしょう。
宿曜占星術(宿曜占い)の日本伝来について
そして不空金剛の弟子が中国唐代の密教僧・恵果であり、その恵果の弟子が空海です。空海は806年に数多の経典を日本に持ち帰っており(御請来目録)、宿曜経もその中に含まれています。
空海が中国で宿曜占星術(宿曜占い)やインド占星術をどのくらい学んだのかはわかりませんが、不空金剛・史瑶・楊景風→恵果→空海という流れで、宿曜占星術(宿曜占い)は日本で定着することになりました。その後、空海だけでなく何人もの高僧がこの本を持ち帰っています。空海に続き、天台宗の円仁が847年に、円珍が858年に宿曜経を請来しました。これらを元にして宿曜道が形作られていきます。
宿曜占星術が日本で花開いたのは10世紀から
しかし実際に宿曜術が日本で花開いたのは、空海による招来の150年近くも後でした。これは当時の日本の技術力では天文計算と作暦ができず、暦が作れない以上占いもできなかったからです。本格的に使われるようになったのは「957年に天台僧日延が符天暦(ふてんれき)を持ち帰り、ようやく天体の位置計算ができるようになってから」と文化人類学者の中牧弘允教授は述べています。
また、高野山の寺院で長らく用いられてきた「覚勝本」と呼ばれるテキストがあります。これは1736年に出版されたもので、各種の古写本を比較整理したものです。この覚勝本は不空金剛の占いを色濃く残したものとなっており、このあたりも日本で宿曜占星術(宿曜占い)が独自の発展を遂げた背景にありそうです。
ここまでをまとめると、宿曜占星術(宿曜占い)はヘレニズムやインドの占星術を元としながらも、原典成立の時点からすでに仏教徒の占いであり、それが花開いたのは日本であったということてす。
陰陽師と対抗していた宿曜占い師
宿曜占星術(宿曜占い)は平安期には「宿曜道」として広く認知され、陰陽道としのぎを削るほどの存在でした。ただし、陰陽道はあくまで陰陽師というテクノクラート(官僚)が管掌していた術ですから、宿曜占星術(宿曜占い)はより民間に根ざしたものであったようです。
古来の宿曜占星術のホロスコープ
面白いことに「宿曜勘文」という、当時の占いの鑑定書のようなものが残されています。また当時のホロスコープ図については、神戸大学のホームページに「宿曜占文抄」を採り上げた論文があり、そこから様子をうかがい知ることが出来ます。
近年における宿曜占星術(宿曜占い)の広まり
近年では高野山大学の森田龍倦師が僧侶としての立場から貴重な研究をものにされ(「密教占星法」)、矢野道雄先生が文献学的な考察を一般書(「密教占星術―宿曜道とインド占星術」)を通じて広めました。
近年に入って上住節子師や羽田守快師が占い師や実務家向けの書籍を相次いで刊行し、占い師のみならず、一般人の広く知るところとなっています。
僧侶が牽引する現代の宿曜占星術
矢野道雄先生は占いを信じない現実主義者ですが、森田龍倦師、上住節子師、羽田守快師はそろって僧侶で、現在この分野を牽引しているのは羽田守快師ですから、やはり日本においては仏家の占星術だと言えるでしょう。使用するシステムが僧侶寄りではなく占い師寄りの27宿であっても、宿曜経と仏教、経典、そして開運法は密接につながっていますから、この点は忘れないほうが良いと思います。
なお僧侶以外ではアイビー茜先生、宇月田麻裕先生、小峰有美子先生なども宿曜占星術(宿曜占い)の一般書を著して、この分野に貢献されています。
27宿説と28宿説について
宿曜占星術(宿曜占い)を学んでいる人が疑問に思うのが、27宿説と28宿説があることです。具体的には、生まれた日が何宿であるかの判定に、牛宿という宿を入れるかどうかという違いになります。
この点を「宿曜二十八宿秘密奥義伝」(岡崎立命)では、「天竺では牛宿を除いて27宿としていたが、牛宿を加えて28宿としたのは唐土の天門」として、仏家の信仰とインド占星術の違いであるとしています。なお中国から午宿がインドに逆輸入されたことがあったそうですが、定着はしなかったようです。
実際にインド占星術ではナクシャトラという宿曜と似た概念があり、こちらは牡羊座の0度を基準に13度20分ずつ各宿が配当されています。13度20分に27をかけると360度となりますから、インド占星術をルーツにしているという宿曜占星術(宿曜占い)の性格を考えると、やはり27宿が占いのシステムとしては合理的であると考えます。
経典を重視する僧侶は、非常な吉宿と経典に示された午宿を無視出来ないのかもしれません。我々は仏教徒ではあったとしても、僧侶ではなく市井の占い師ですから、本来の占いとして使いやすいものを採るのが本筋でしょう。
午宿の扱いについて
同「宿曜二十八宿秘密奥義伝」では、「午宿は一日のうちの正午を司るのであるから、正午あたりの生まれの人を牛宿とするのだ」としています。
また、午宿というのはその他の27宿とは天体としての位置が大きく違っており、同列に論じるには前提が違うとする論もあります(前掲「密教占星術―宿曜道とインド占星術」)。しかしながら、後述の27宿の相性と28宿の相性問題を考えると、占い師としての実用上は27宿の宿曜占星術(宿曜占い)を学んでおく以外にないでしょう。
27宿の相性と28宿の相性について
宿曜占星術(宿曜占い)で相性を調べる場合、三・九の秘法というものを用います。これは自分の宿から逆時計回りに9つ目、18つ目の宿にあたる人とは、人生において深い縁があるとするものです。このように宿曜占星術(宿曜占い)においては、3と9という数字は大事なものとなっています。
27宿でないと相性判断は難しい
3と9を掛け算すると27になります。生まれ日の宿を28宿式で出していてはこの方法が使えないことになります。やれないことはないと思うのですが、元々のインド占星術としては27宿で運用されていたことを考えると、やや無理があると言えるでしょう。
したがって、こちらも占い師としての実用上は、27宿の宿曜占星術(宿曜占い)と三・九の秘法とを学んでおけば問題はないでしょう。
宿曜占星術(宿曜占い)で使用する星・宮の早見表
以下に、宿曜占星術(宿曜占い)で用いる星と宮の早見表を掲載しておきます。意味や内容、相性は適宜追加していきます。
宿曜占星術(宿曜占い)の本尊
- 文殊師利菩薩(仮託されたもの)
二十八宿
- 昴宿
- 畢宿
- 觜宿
- 参宿
- 井宿
- 鬼宿
- 柳宿
- 星宿
- 張宿
- 翼宿
- 軫宿
- 角宿
- 亢宿
- 氐宿
- 房宿
- 心宿
- 尾宿
- 箕宿
- 斗宿
- 牛宿(生まれ日の判断に用いない流派がある)
- 女宿
- 虚宿
- 危宿
- 室宿
- 壁宿
- 奎宿
- 婁宿
- 胃宿
北斗七星
- 破軍星(はぐん)
- 武曲星(むごく)
- 廉貞星(れんてい)
- 文曲星(もんごく)
- 禄存星(ろくぞん)
- 巨門星(こもん)
- 貪狼星(とんろう)
九曜
- 月曜星
- 火曜星
- 水曜星
- 木曜星
- 金曜星
- 土曜星
- 日曜星
- 計都星(ケートゥ)
- 羅睺星(ラーフ)
十二宮
- 女宮
- 獅子宮
- 蟹宮
- 秤宮
- 夫妻宮
- 蝎宮
- 牛宮
- 弓宮
- 白羊宮
- 摩宮
- 瓶宮
- 魚宮
宿曜占星術(宿曜占い)関連の記事
占い師になるには?
占い師になるにはどうすればよいか、占い師というのはどういう仕事か、現役占い師の立場から解説するページ「占い師になるには」を作りました。こちらもご覧ください。