田中(あらいちゅー), 馬主で大家で占い師
命盤が違う? 紫微斗数で使用される太陰太陽暦に関する諸問題
命盤が違う! 紫微斗数と暦に関する諸問題
紫微斗数の命盤を自動計算している人のために、アプリやサイトごとに命盤が違ってしまう理由についてご説明します。紫微斗数が嫌いになってしまうといけませんので、このあたりの勉強は後回しにしたほうが良いと思います。わけがわからないという方は一旦パスしても大丈夫です。
真太陽時と均時差について
まずは、正しい生年月日時を求めるためのプロセスの違いです。占術家の北斗柄先生は「紫微斗数における命宮の出し方は、実在天体を使用する七星四餘における命宮の出し方を元にしている」と述べています。そして七星四餘が恒星時を使用している以上、紫微斗数の命盤も恒星時をもとに作盤するべきだと論を進めています。
したがって、恒星時と対応しない真太陽時を考慮する必要はなく、(真太陽時から平均太陽時を差し引いたものである)均時差についても無視して構わない、というのが北斗柄先生の見解です。北斗柄先生が以下の記事で解説してくださっているので、ご参考ください。
しかしながら、均時差を採用して命盤を作成する流派もあるでしょう。その場合、刻限の区切り前後の生まれの方では、他流派と命盤が変化することがあります。
太陰太陽暦の作暦法と閏月の処理について
紫微斗数は太陰太陽暦を使用する占いです。太陰太陽暦とは何かを大変ざっくばらんに言うと、太陽と月を利用して、今が何月であるか、何日であるかを決めていく暦です。具体的には、月の朔と太陽の二十四節気を組み合わせて、月・日を決定していきます。これまた北斗柄先生がわかりやすく動画で解説してくださっています。
こちらの動画を参考にしつつ、紫微斗数における太陰太陽暦の使い方の異説を見ていきましょう。
定気法と恒気法の問題
まず、定気法と恒気法の問題です。定気法と恒気法というのは、二十四節気を求める方法のことです。
定気法は太陽の黄経を機械的に等分して二十四節気を定めるもので、空間分割法と言えます。恒気法は一年間を時間的に等分して二十四節気を定めるもので、時間分割法だと言えるでしょう。
先述のように、太陰太陽暦では月の決定に二十四節気を使うため、この求め方が違うというのは大問題なのです。
太陰太陽暦は(月の)朔から朔の間が一ヶ月となり、それが何月であるかは、その期間に含まれている(二十四節気の)中気が何であるかで決まります。そして中気が含まれていない場合は閏月として処理します。
このため、定気法と恒気法では「いま何月か」が違ってしまうケースがあり、作盤に大きく影響するというわけです。
おまけ・国立天文台による2022年の定気法暦
年月日 | 時刻 | 天体 | 現象 | 基準 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
2022/01/05 | 18:14 | 太陽 | 二十四節気 | 小寒(黄経285°) | |
2022/01/17 | 12:54 | 太陽 | 雑節 | 土用(黄経297°) | |
2022/01/20 | 11:39 | 太陽 | 二十四節気 | 大寒(黄経300°) | |
2022/02/03 | 太陽 | 雑節 | 節分 | ||
2022/02/04 | 05:51 | 太陽 | 二十四節気 | 立春(黄経315°) | |
2022/02/19 | 01:43 | 太陽 | 二十四節気 | 雨水(黄経330°) | |
2022/03/05 | 23:44 | 太陽 | 二十四節気 | 啓蟄(黄経345°) | |
2022/03/18 | 太陽 | 雑節 | 彼岸 | ||
2022/03/21 | 00:33 | 太陽 | 二十四節気 | 春分(黄経0°) | |
2022/04/05 | 04:20 | 太陽 | 二十四節気 | 清明(黄経15°) | |
2022/04/17 | 09:43 | 太陽 | 雑節 | 土用(黄経27°) | |
2022/04/20 | 11:24 | 太陽 | 二十四節気 | 穀雨(黄経30°) | |
2022/05/02 | 太陽 | 雑節 | 八十八夜 | ||
2022/05/05 | 21:26 | 太陽 | 二十四節気 | 立夏(黄経45°) | |
2022/05/21 | 10:23 | 太陽 | 二十四節気 | 小満(黄経60°) | |
2022/06/06 | 01:26 | 太陽 | 二十四節気 | 芒種(黄経75°) | |
2022/06/11 | 06:53 | 太陽 | 雑節 | 入梅(黄経80°) | |
2022/06/21 | 18:14 | 太陽 | 二十四節気 | 夏至(黄経90°) | |
2022/07/02 | 05:47 | 太陽 | 雑節 | 半夏生(黄経100°) | |
2022/07/07 | 11:38 | 太陽 | 二十四節気 | 小暑(黄経105°) | |
2022/07/20 | 01:41 | 太陽 | 雑節 | 土用(黄経117°) | |
2022/07/23 | 05:07 | 太陽 | 二十四節気 | 大暑(黄経120°) | |
2022/08/07 | 21:29 | 太陽 | 二十四節気 | 立秋(黄経135°) | |
2022/08/23 | 12:16 | 太陽 | 二十四節気 | 処暑(黄経150°) | |
2022/09/01 | 太陽 | 雑節 | 二百十日 | ||
2022/09/08 | 00:32 | 太陽 | 二十四節気 | 白露(黄経165°) | |
2022/09/20 | 太陽 | 雑節 | 彼岸 | ||
2022/09/23 | 10:04 | 太陽 | 二十四節気 | 秋分(黄経180°) | |
2022/10/08 | 16:22 | 太陽 | 二十四節気 | 寒露(黄経195°) | |
2022/10/20 | 19:13 | 太陽 | 雑節 | 土用(黄経207°) | |
2022/10/23 | 19:36 | 太陽 | 二十四節気 | 霜降(黄経210°) | |
2022/11/07 | 19:45 | 太陽 | 二十四節気 | 立冬(黄経225°) | |
2022/11/22 | 17:20 | 太陽 | 二十四節気 | 小雪(黄経240°) | |
2022/12/07 | 12:46 | 太陽 | 二十四節気 | 大雪(黄経255°) | |
2022/12/22 | 06:48 | 太陽 | 二十四節気 | 冬至(黄経270°) |
閏月の処理方法が複数ある問題
朔と朔の間に中気を含まない月を閏月とするのですが、この閏月の処理方法が考えつくだけで4種類もあります。
閏を前月の扱いとする(例・1月2月3月閏3月4月5月…)、後月の扱いとする(123445…)、月の前半は前月として後半は後月とする(123/3&4/45…)。また極端な方法ですが、この部分に太陽暦の節月を利用して閏月の問題を回避する流派もあります(透派)。
紫微斗数研究家の椎羅先生が、閏月の処理で命盤が違ってしまった例をブログに書いてくださっていますので、こちらもよければご参考ください。個人的には、日本で主流となっている前後半に分ける方法はしっくりこないため、後ろの月、もしくは前の月に準ずる方法が良いと思っています。
太陰太陽暦の地方性について
次に日の問題です。太陰暦では、朔(新月)を含む日をその月の1日とします。朔というのは地球の中心から見て、太陽の中心と月の中心の黄経が同じになった瞬間です。
宇宙全体から見るとこれが成立するタイミングは1つしかないのですが、地球上には地方時差が存在するため、この瞬間を22時に迎える国もあれば、午前1時に迎える国もあります。
作暦のルールでは「朔(新月)を含む日を1日」とするため、22時に朔を迎えた国と、午前1時に朔を迎えた国では、太陽暦と太陰暦を変換する際にズレが発生することになります。またまた北斗柄先生のページに実例が紹介されていますので、ご参考ください。
紫微斗数と暦の問題は流派ごとに諸説紛々
このように、紫微斗数と暦の問題というのは諸説紛紛となっており、ソフトや流派によって命盤が違う原因となっています。実際に、命盤の自動計算サイトをいくつか使うと、同じ生年月日時でも命盤が違ったり、はたまた特定の日付で計算不能になったりします。
現状ではみなさんが師匠から教えられたとおりにするか、もしくは「中国の暦を使って、月の決定は定気法だからまあそのままで、しっくり来なかったら日や時刻をいじってみよう。閏については伝統的なのが前半方式、日本だと前後半方式だけど、まあ個々人で考えてね」のような、玉虫色の対応にせざるを得ないのではないでしょうか。
作盤法そのものについての異説
最後に、紫微斗数の作盤法自体にも流派によっての異説があります。一番大きなものは四化星の配置についての異説で、これは下記のページにまとめてありますのでご参照ください。
また、日本と台湾では星の名前についても相違があります。主だったものは「天空星・地空星・地劫星」の名称の扱いで、こちらは以下の記事にまとめておきました。
簡単なところから紫微斗数を学ぼう!
紫微斗数《超》入門と題して、紫微斗数の主要な構成要素を紹介しています。紫微斗数の楽しさの一端に触れていただければ幸甚です。
また、紫微斗数の命盤を無料の自動計算で作成したいという方は、こちらからどうぞ。自動計算の設定の仕方にも、実はコツがあるのです。
そして、紫微斗数での婚期や出会いの時期ですが、オーソドックスな方法をご紹介します。