田中(あらいちゅー), 馬主で大家で占い師
紫微斗数で毎年の運勢(大限・年運・流年)を判断する方法
紫微斗数で毎年or10年間の運勢を鑑定するには?
精密な性格判断ができる紫微斗数ですが、毎年の運勢が良いのか悪いのかという、行運判断はやや苦手だと言われています。
これは紫微斗数の行運判断法が流派ごとに全く違っているからで、四柱推命を主に学ばれている人などからは「切れ味が悪い」と評されることがあります。
困ったことに「この流派のやり方が正しい」という絶対的な基準はなく、それぞれが鑑定や勉強を進めていくなかで、取捨選択をしながらある意味オリジナルの鑑定法を組み立てていくことになります。
今回は初心者が紫微斗数の行運判断の基礎を理解できるように、紫微斗数の行運判断法にはどういったものがあるのか、また一般的な判断法はどんなものなのかを解説したいと思います。
大限運と流年運
まず大前提として、紫微斗数の行運鑑定法には、10年単位の運勢を見る大限法(四柱推命の大運のようなもの)と、1年単位の運勢を見る流年法があります。
大限法(10年間の運勢)
大限法は、命盤のなかに示された大限という宮を読んでいく方法で、何年から何年の10年間は子宮、その次の10年間は丑宮というふうに、具体的に読んでいく場所が決まっています。
流年法(1年間の運勢)
毎年の運勢を見る流年法は、太歳法・小限法・併用法に分かれています。具体的には、流派によって「この年はこの宮を見て鑑定する」という場所が違います。
太歳法
日本で多数派になっている飛星派の行運判断法が「太歳法」です。このやり方は単純明快で、例えば丑年であれば命盤の丑宮に入っている星で運勢を判断します。
小限法
日本でかつて主流だった星曜派(三合派)が年運を見る際に使うのが「小限法」です。これは命盤のなかに示された小限という宮を読んでいく方法で、何年は申宮、その次の年は未宮というふうに、具体的に読んでいく場所が決まっています。
太歳・小限併用法
太歳と小限を併用するのが太歳・小限併用法です。太歳と小限では表しているものや守備範囲が違うとして、両方の意味を斟酌して鑑定を進めていきます。
例えばですが、太歳は外から飛び込んでくる運(仕事が来るか・出会いがあるか・怪我をするか等)、小限は自分が作り出す運(健康状態はどうか・精神状態はどうか・困難やトラブルに打ち勝てるか)、といったような判断をします。
どの流派がどの方法を使っているか、このあたりの議論は「紫微斗数の流年法(大限・太歳・小限と四化飛星)」のページにまとめておきましたので、参考にしてください。
具体的な行運の鑑定法
ここからは行運の具体的な判断法の解説に入ります。細かな流派ごとの説明をしていく余裕はありませんので、ここでは(日本で)標準的と言えるやり方をお伝えします。具体的には、私の敬愛する東海林秀樹先生が、ご著書などで解説しているやり方です。
元々の命盤を駆使する地盤鑑定、期間限定で宮位を動かす人盤鑑定、四化を縦横無尽に移動させる天盤鑑定の三層構造となっています。
- 地盤…元々の命盤を深く読んでいく
- 人盤…期間限定で十二宮の宮位を振り直す
- 天盤…地盤天盤の鑑定法に加えて四化星を移動させる
なお後述しますが、地盤のみを使う流派や、逆に天盤のみを重視する流派というのもあり、全てを使っているから優れている流派だとか、一つしか使わないから洗練されている流派だとか、そういうことでは全くありません。流派に関係なく、うまい人はうまいというだけのことです。
また、地盤しか使わない流派では天地人盤の区別そのものが存在しませんので、地盤という言葉は使わず、命盤・元命盤とのみ呼んでいます。このあたりの言葉の使い方で、その流派がどういった鑑定法を使っているのかが、ある程度わかります。
地盤の鑑定
もっともベーシックな鑑定法となります。大限にあたる宮、小限にあたる宮、太歳にあたる宮に入っている星を見て、10年(大限)もしくは1年(小限と太歳)の吉凶を判断するものです。例えば来年の小限宮や太歳宮が卯宮に来るならば、来年の運勢は卯宮に入っている星を中心に見て判断します。
地盤の具体的な鑑定法
大限・小限・太歳にあたる宮に吉意のある甲級主星が入っており、それを補佐する甲級副星が同宮していたり、加会(三合宮と対宮)している場合には、その期間は運勢が平穏、もしくは好調であるとします。
どういったことが起こるかは、大限・小限・太歳にあたる宮に入っている甲級主星の意味や、乙級星の意味を参考にして判断します。
加会している宮に入っている星からも象意が出てきますが、あくまで大限・小限・太歳にあたる宮を中心に鑑定を進めたほうがわかりやすいでしょう。そうしないと、吉凶が混在しすぎて、最終的な判断を下せなくなるはずです。
吉の場合とは逆に、大限・小限・太歳にあたる宮に凶意のある甲級主星が入り、同じく凶意のある甲級副星や乙級星が入っている場合、その期間は要注意となります。
どういったことが起こるかは吉の場合と同様に、甲級主星の意味や、乙級星の意味を参考にして判断します。
吉凶が混在した場合
吉の星と凶の星が混在した場合は「トータルとして吉の星が強いからその期間は全体的に吉」と判断することもありますし、「この星の表す事柄は吉だけどその星が表すことは凶」とまだらに判断することもあります。
また特定の星の組み合わせで特に強い吉意・凶意が現れることもあり(左補と右弼が同居すると不倫の意味が出てくる、等)、このあたりは学習をすすめることで鑑定が精緻になっていきます。
星の輝度による違いについて
紫微斗数に登場する星には状態を表す輝度があり、これを行運判断の際に斟酌することがあります。地盤のみで鑑定する場合はこの考え方を取り入れたほうがわかりやすいでしょう。
吉星が廟であるのがもっとも状態がよく運勢に吉意を与え、凶星が落陥しているのがもっとも状態が悪く、運勢に凶意を与えると判断します。
なお最近は(後述する天盤を吉凶判定の要にする人が多いことから)、行運判断で輝度を参考にしない人も増えています。ただしこの場合も、太陽星と太陰星に関しては輝度を参考にする人が多いようです。逆に言えば、この二星はそれだけ輝度に影響されやすいということです。
大限・小限・太歳にあたる宮に甲級主星がない場合
大限・小限・太歳にあたる宮に甲級主星がないことが多くありますが、この場合は対宮にある甲級主星の意味をもって判断します。この場合、吉意も凶意も三割ほど減少するという考え方の人が多いようです。
人盤の鑑定(活盤・動盤)
地盤の鑑定を一歩進めたものが人盤です。これは大限や太歳の宮を(この期間だけ作用する)仮の命宮とみなし、他の十二宮位も役割を振り直して占うという方法です。期間限定で宮位を振り直すやりかたを、一般的には地盤・活盤・動盤と呼びます。
例えば命宮が酉であれば遷移宮は卯になりますが、来年の太歳が寅であれば、来年は寅を仮の命宮、未を仮の遷移宮とみなして鑑定を進めていきます。この場合、遷移宮が表す事項(外出運や対人運)を鑑定する際は、来年限定で未を見ることになります。こうすることで、毎年の運勢をより精緻に占えるというわけです。
繰り返しになりますが、人盤・天盤を使わず、地盤だけですべてを鑑定する流派もあり、人盤を使っているから優れている、使っていないから劣っている流派だということではありません。
人盤の具体的な鑑定法
具体的な鑑定法は地盤と同様で、各宮にどんな星が入っているかを中心に吉凶や出来事を判断していきます。例えば(この期間だけ作用する)仮の官禄宮に凶星が集まっているならば、その期間の仕事運はよくないだろう、といった判断をします。
小限の人盤は見ない?
小限を中心にして各宮を振り直す方法もありますが、人盤・天盤は飛星派のみなさんが中心となって使っている鑑定法であり、結果として小限宮から宮位を振り直した小限人盤(小限活盤)を本や鑑定で見ることは少なくなっています。
地盤と人盤で吉凶が食い違う場合
地盤では夫妻宮がとてもよいが、人盤を出したところ来年限定の夫妻宮が最悪であった、といったケースがまま起こります。
人盤を使えば毎年(もしくは大限の10年間)の吉凶や出来事を精密に予測できますが、人盤だけで全てを判断するのではなく、地盤の吉凶が毎年の運勢に(ある程度)影響すると考えてください。
これは考えてみれば当然のことで、例えば健康な若い人が骨折するのと、不健康なお年寄りが骨折するのとでは、ダメージやその後の展開がかなり違うはずです。
また、まったく異性にご縁のない人に出会い運が回ってくるのと、モテてモテて困っている人に回ってくるのとでも、意味合いや有り難さが大きく違ってくることでしょう。
あくまで地盤(もともとの命盤)こそがその人の本質ですから、そこに人盤の吉凶や意味合いを重ね合わせて、立体的に鑑定していくことが大事です。
天盤の鑑定(四化飛星)
30年ほど前に紫微斗数の秘伝とされていたのがこの天盤鑑定法です。俗に四化飛星法とも言われていますが、現在ではかなり一般的になっており、中級~入門クラスの講座でも解説されるようになってきました。
具体的には、大限にあたる宮の干、太歳にあたる宮の干(寅年なら寅宮の宮干ということです)から四化星を振り直し、ナニナニ宮のナニナニ星に化禄がついたからどう、化忌がついたからこう、といった判断をします。
注意するべき点として、四化を振り出せるのは(一般的には)大限と太歳のみであって、小限の宮の干から振り出すことはありません(台湾にはその使い方をする流派もあるそうです)。小限を使用して運勢を見ていく流派で四化を飛ばす場合、その年の年干を使います。
とはいえ、このあたりはバリエーションが多すぎるうえ諸説紛々なので、初心者の方はまずベーシックな飛星派の技法である「大限にあたる宮の干から、太歳にあたる宮の干から」という振り出しかたで研究を進めたほうが良いでしょう。
天盤の具体的な鑑定法
大限にあたる宮の干、太歳にあたる宮の干から四化星を振り直すと書きましたが、吉凶を大きく左右するのは化禄星と化忌星のため、この2つを中心に吉凶を判断します。
四化星の残りの化権と化科は象意の判断に使ったり、吉意を少し増すものと考えたほうがわかりやすいでしょう。
具体的な鑑定法ですが、化禄には開運と制厄の作用があるため、化禄が降り立った宮は吉位が増し、凶意が抑えられると判断します。
例えば、太歳宮から振り出した化禄が太歳宮に入った場合、この1年間は吉意があり、比較的順調だと判断できます。加会している宮に入った場合も、ほとぼどに吉意が増します。
化忌の場合は逆となり、太歳宮から振り出した化忌が太歳宮に入った場合、その1年間は凶意をはらんでおり、要注意だと判断できます。
加会している場合も同様に、ほとぼどに凶意が増します。
これを人盤と組み合わせて活用すると「太歳宮から振り出した化忌が人盤の官禄宮に入ったので、この時期の仕事運はどうこう」といった判断をすることになります。
天盤の高度な使い方
四化を飛ばしていると、「地盤に化忌が入っている宮から化忌を振り出したら、その振り出した宮に化忌が戻ってきた」といったようなことが多々起こります。
元々の四化、降り出した四化、降り出した四化からさらに降り出した四化など、四化飛星の組み合わせは無限にありますから、これは仕方のないことです。
こういった過程で星が同居したり、出入りしたりするパターンから吉凶を判断することがあり、四化飛星の秘伝や例外則とされています。
このあたりは高度な専門書や先生について学ぶほかなく、中級以上で身につけるテクニックだと言えそうです。
四化の吉凶に関する異説
化忌はトラブルの星として嫌われることが多いのですが、化忌がもたらす幸運というのもありますし、化忌が運勢を揺さぶるからこそ発展するということもあります。
そして逆に、化禄が停滞を招くこともあります。こちらも複雑かつ多種多様となるので、中級以上のテクニックだと言えるでしょう。
紫微斗数の行運判断のまとめ
紫微斗数の行運判断について、要点をまとめます。
- 10年運は大限で見る
- 1年運を見る方法は小限と太歳に分かれている
- 地盤・人盤・天盤の三層構造になっている
- 人盤で十二宮位を振り直す
- 天盤で四化星を縦横無尽に振り出す
- 天盤は四化飛星と言われてかつては秘伝だった
- 天地人の三層全てを使っているから優れているというわけではない
初心者の方は以上の点をご理解いただければ、勉強が進みやすいと思います。
紫微斗数の行運に関しては各流派の違いを省いて説明している専門書が多く、初心者の理解を妨げているように思います。
自分が何を学んでいるかをわからずに勉強を進めるのは危険ですし、堂々巡りになりかねませんから、ある程度概要を理解してから学び始めたほうがよいでしょう。
紫微斗数学習のために推薦する本
こういった点も含めて比較的論点が整理されているのが、私の敬愛する東海林秀樹先生、照葉桜子先生のご著書です。両先生の書籍を推薦書として挙げておきますので、興味のある方は書店でお探しになってください。
紫微斗数占星術奥義(東海林秀樹)
少し古い本ですが、巻末の行運鑑定の構成が大変わかりやすく、最初の一歩に向いていると思います。天地人盤から全体を解説する構成は、このページでも参考にさせていただきました。買えるうちにお買い求めください。
完全マスター 紫微斗数占い(東海林秀樹・説話社)
飛星派の秘伝を中心にした、東海林秀樹先生の紫微斗数の集大成とも言える本です。
紫微斗数占法要義(東海林秀樹・東洋書院)
こちらも古い本ですが、四化飛星の解説をはじめて日本で行ったと言ってもよいくらい(違ったらすいません)のエポックな本です。
一生の運勢を読み解く! 紫微斗数占い(照葉桜子)
東海林秀樹先生とタッグを組んで占いを教えている、照葉桜子先生の書いた入門書です。説話社のこのシリーズは低価格にも関わらず内容が盛りだくさんなので、初心者から中級者まで、揃えておいて損はないと思います。
簡単なところから紫微斗数を学ぼう!
紫微斗数《超》入門と題して、紫微斗数の主要な構成要素を紹介しています。紫微斗数の楽しさの一端に触れていただければ幸甚です。
また、紫微斗数の命盤を無料の自動計算で作成したいという方は、こちらからどうぞ。自動計算の設定の仕方にも、実はコツがあるのです。
そして、紫微斗数での婚期や出会いの時期ですが、オーソドックスな方法をご紹介します。